いちだ&さかねの往復書簡

いちだ&さかねの往復書簡 NO.4

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坂根

一田さん。ありがとうございます。

「自分を消す」ことに関して、
私はせっかく大切なことを教えていただいているのだと思いますが、
咀嚼して、自分の言葉にするためには、正直な所、もう少し経験が必要になりそうです。

今はまだ、自分の興味があることでの質問なのか、
客観的な視点をもっての質問なのか、境目が分からないまま質問をしている節があります。

ただ、私のやりたいのは「フリーライター」としての仕事です。

一田さんが15年間もかけてようやく
「自分の文章がかけようになった」という言葉の重みを感じています。
まずは経験値をあげることからですね。

さて、次の相談です。

原稿を考えるにあったって、
いつも頭を悩ませているのが「キャッチ」と「リード」です。
短い文章でいかにインパクトが強いものを表現できるか…が
キーワードになってくると思うのですが…。
毎回すごく時間をかけて考えても、
一田さんに「ありきたりだから、もう一度考えてみて」と
アドバイスをいただくことがしばしばあります。

前回に至っては、言い訳がましく10行くらい説明しながら
原稿をお送りするようにしていたのですが、
「この10行の説明の方が、よっほど分かりやすい」とのお返事をいただきまして、
実はかなり撃沈していました(笑)。

だからこそ次回は、心に響くものを表現しようと考えていまして。

どんな思考をすれば、短くまとめられるのか。
きっと、私の頭の中で、「何がありきたりで、何がありきたりでないか」
の違いをまず理解することが、今後のポイントになってくるのではないかと思っています。

そこで質問です。一田さんがキャッチやリードを考える上で、
いつも意識していることや考え方のコツは、何かあるのでしょうか。

一田

そうですか……。撃沈していましたか……。
ごめんなさい。

私は、誰かにダメ出しをする、ということはめったにないのです。
誰だって、ダメだしをされたら、ムッとするし落ち込みます。
そういう私だって、ダメだしをされるのが大嫌い!
原稿の直しが入るとかなり不機嫌になります。(笑)

ダメだしをする、ってことは、相手にとって嫌なこと。
「いいよ、素晴らしいよ」って言った方が、相手にとっては気持ち良い。
ダメって言って
「なんだ、いちださん、エラそうに!冷たいな〜」
って思われるかもしれない。
それでも、「ダメ」って言えるのは、私の最大の愛情表現なのです!
そして、それが言えるのは、
きついことを言っても、きっと受け止めてくれる。
そして、また頑張ってくれる、
という信頼があるから。

ダメだしをされるって、とっても貴重な体験です。
今の私年齢になると、あんまりダメだしをされなくなって、危険だと思っています。
痛い思いをしないと、人って成長できませんから……。

さて、リード、キャッチについて……。

私も短い言葉で何かを伝えるのは、とっても難しいと思っています。
読者はまずページの中でリードやキャッチを目にし、
それに誘われて本文を読んでくれるので、
ここでぎゅっと心に響く言葉を生み出さなくてはいけません。

ひとつ言えるのは、
事実をそのまま書くと「ありきたり」になるってこと。

私が駆け出しの頃、ある雑誌の編集長から
「写真で見えることは書かなくてもいい」
と言われたことを今でも覚えています。
写真の裏側にある、
その人の日々の営み、過ごしている時間、考えていることを書くのが
「本文」なのだと。

その本文の総まとめになり、ページ全体でいいたいことを
ぎゅっと凝縮させるのがキャッチやリードです。

もちろん、そのページがどんなページかを
伝える「旗」のような役目もあるので、
説明的な要素も必要です。

でも、より大切なもうとつの役目が
取材対象と読み手を

「つなぐ」

ということ。
つまり、紹介する人が考えていることを、
いかに読者の胸に響かせるかということです。

そのために必要なのが
「想像力」と「変換力」じゃないかと思っています。

「想像力」とは、読者の姿を思い描くこと。

みんなこんなこと困っているよな

こんなことが嬉しいって思うよなと、

読んでくれる人の心を想像しながら、
自分の心と重ねて、
そこに響く言葉を考えます。

「変換力」とは

取材させてもらった方の思いを、
そのままではなく、読者にわかりやすく変換すること。

ときには、取材したまんま書くよりも
まったく違う方向から説明したり、
違う言葉で表現したほうが、
「ほんとうのこと」が伝わることもあります。

「おいしい」ということを伝えるのが、
どんな調味料を使い、どうやって作ったか
という「事実」ではないように……。

が、こうやって理論を言っても
実際には、1ケース、1ケース、ウンウン唸って考えて、
試行錯誤し、また書き換えて……という時間が、
文章力を磨いてくれるのかなと思います。

私はよく、どう書けばいいか悩むとき、
ソファに座って、遠く宙を見つめます。
連れ合いは、私が「その状態」になったら、
「ああ、またあっちの世界にいってるな」とわかるよう。
取材した人を思い出し、想像し、
どう変換したらいいかひたすら思いを巡らす……。

このときだけは、パソコンから離れます。
「あっちの世界」にいく時間が必要なようです。

この「ひたすら」という時間が、
私にとってキャッチやリードを書く上で一番のキモかもしれません。

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