ビジネスピープルからの贈り物

ヒーミー 下川宏道さん 里美さん vol2

 

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ジュエリーブランド「himie」の下川宏道さんと里美さんに、ビジネスのお話を伺っています。

そもそも下川さんは家業を継ぎ、歯科技工士として働いていたそうです。
その合間に、同じ道具を使ってアクセサリーを作り、井の頭公園で売り始めました。
徐々に人気が出て、同じお客様が買いに来てくれるようになり、
やがてジュエリーの合同展に出てみることに……。
「だんだん屋根のあるところで売れるようになっていったんです」と笑います。

「自分でおいてもらいたいショップや、好きな雑誌の編集部にも営業に行ったんですよ。
アポなしで突撃で!
好きなお店には置いてもらえるようになりましたね。
雑誌はぜんぜんのせてくれなかったけど(笑)
女性誌じゃなくて、インテリア誌でした。
編集部で、横でモデルオーディションとかやってるのを眺めたり、面白かったな〜」

下川さんは、いつも落ち着いていて、
おっとりとした口調で、まったくギラギラ感や、イケイケ感のない方です。
そんな方が、ご自身で営業に出かけた時期があったんだ!と驚きました。
そして、どこへ行っても、どんな場面でも、その状況を面白がっちゃう……。
どうやら、この辺りに「himie」躍進の秘密があるよう。

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「いちばんの転機はなんだったと思いますか?」
と聞いてみました。

「それは、松屋銀座の出店かなあ。
ときどき、百貨店のイベントに呼んでもらうようになって、
その中で商品が売れ始めたんですよね。
それで、常設でお店を出さないかと声をかけてもらったんです。
自分のお店を出すのは憧れでした。
でも、まだ今じゃないな、って思っていたんです。
今思い返せばビビってましたね(笑)」

 

今では、奥様の里美さんがパートナーとして仕事を静かにがっしりサポートしてくれていますが、
当時はまだ下川さんひとり。

「松屋銀座に出店するということは、スタッフを3〜4人雇わなくちゃいけない。
つまり給料を払わなくちゃいけない。それをまかなえるだけ売れないといけない。
でもね〜、バイヤーさんが上手に誘ってくれたんです(笑)
『イベントの延長線上でやってみない?』みたいに。
その言葉に背中を押されて、腹をくくりましたね。
僕たち夫婦はね、基本的にギャンブラーなんですよ(笑)
僕は実家が歯科技工士だし、里美の実家はお饅頭屋さん。ふたりとも商売人の家庭で育ったから」

「いきなり社員を雇うのは無理だったので、アルバイトを募集しました。
いい人がきてくれて、本当に助かりましたね。
もう、余裕なんて一切なくて、とにかく一生懸命でした」
そう語る里美さんは、当時アパレル会社で働いていたそう。

 

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「最初は、僕も店頭に立っていました。
でも、百貨店なら個人で店を立ち上げるよりリスクは少ないんですよね。
家賃がいるわけでもないし……。
当時、貯金もなかったし、出店にあたってどれぐらい資金がいるのかわからなくて、
恐る恐る『お金はどれぐらいかかりますかね?』って聞いたら
『電話を買ってもらえればいいですよ』って言われて、
ほっとしたことをなぜだか鮮明に覚えています」と下川さん。

「himie」のアクセサリーは、すべて手作りです。
作っているのは、下川さんと、手伝ってくれている職人さんひとりだけ。

「作って、お店に立って、帰ってきてまた作って……。
あの頃まだ30代だったからできたんですよね」と当時を思い出して笑う下川さん。

作ったはしから売れていったんですか?と聞いてみると

「イベントのときみたいな売れ方はしなかったですね。
イベントでは、『その時にしか買えない』という思いがお客様の胸にありますけれど、
常設だと「いつでも買いに行ける」という安心感で、決定率が落ち着いてきます。
店頭に並べているものが、1月100万円分くらいの時もあったかなあ」と里美さん

「100万円だと、お店潰れちゃうんですよ(笑)」と下川さん。

「それでも、成長のきっかけになりましたね。
売り上げが悪いときとか、うまくいかないときって、ものすごく考えるじゃないですか?
それがよかったと思います。
数字を作らなくちゃいけないこと。商売の基本のようなことを学ばせてもらいましたから」と里美さん。

 

もっとビジネスライクなお話が出てくるかと思いきや、
「himie」立ち上げのストーリーは、意外やビジネスのことなんてまったくわからない
私たちにも理解できる身近な感覚なものでした。
戦略や、計画なんてなし!
ここから「himie」がスタートしたのです。
里美さんの言葉通り、おふたりは「ものすごく考えた」に違いありません。
一見飄々としているふうに見えるけれど、
余裕なんて一切なく、毎日を一生懸命乗り切るしかない…….

誰でもスタートのときって、そんなものなのかもしれません。
私もフリーライターとして仕事を始めたとき
フリーライターとは、どんな仕事をする人なのか?
何が正解のやり方なのか?なんて、
まったくわからずに、毎日をがむしゃらに過ごしていただけだったなあ。
ロケットスタートのような一瞬のパワーは、
若い頃、何もわからないがゆえにプレゼントされる特別な力だったのかなあと思います。

ただし、そんな時にも面白いことを見つけて
「ふふ」っと笑っちゃえるのが下川さんのすごさ。
がむしゃらに走っていると、周りのことは見えなくなってしまうのが普通です。
でも、下川さんは、営業に出かけた先の編集部で、
隣のモデルさんのオーディションを面白がれた……。

次回は、 そんな下川さんの「himie」のアクセサリー作りについてお話を伺います。

 

 

撮影/近藤沙菜

 

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