50歳を超えて家族を解散! 京都の町屋で一人暮らしを 西村美津子さん vol.1

 

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もう随分日にちが経ってしまいましたが、
今年のお正月明けに、京都の町屋で暮らす西村美津子さんに会いに行ってきました。

西村さんは、兵庫県芦屋市で開催した「おへそ塾」に来てくださった方。
その時に、「子供が3人いるんですが、そろそろ独立するので、
私もお母さんを卒業させてもらって、
京都の古い町屋を借りて、一人暮らしを始めようと思っているんです!」
とおっしゃっていて、びっくりたまげました。
そのワガママンっぷりに、面白いなあ〜、もっとお話聞いてみたいな〜と
思っていたのでした。

「おへそ塾」が終わってから、
facebookでつながって、西村さんが、京都の町屋を少しずつ改装されていく様子を
興味津々で拝見していました。
お子さん達と暮らしているご自宅は大阪。
そこから通って、新しい暮らしの舞台を作られたというわけです。

せっかく独立したというのに
「一人で寝るのが怖い!」
という投稿を読んで、思わずクスリと笑ってしまいました。

39歳で離婚し、管理栄養士として働きながら、3人のお子さんを養ってきました。
そんな子供達も、今年で30歳、28歳、24歳になるそうです。
28歳の娘さんは今年結婚。9月にはママになる予定なのだとか。
京都に家を借りることを決めてから、大阪の病院を辞め、
京都の病院に仕事場を移し、準備を整えてきたのだといいます。

それにしても、どうして家族を解散し、子育てを卒業しようと思ったのでしょうか?

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「始まりはね、ジャズ喫茶だったんです」と西村さん。
へ? どういうこと?と尋ねました。

「美味しいものを一緒に食べ歩く友達が、ジャズに詳しくて、
神戸のジャズ喫茶を巡り始めたんです。それが楽しくて。
そのうち京都まで足を伸ばしてみようか?と訪ねたのが、
出町柳にある『Lash Life』でした。
そこの奥様がたまたま同じ歳で、すっかり仲良くなって、
気がついたら毎週通うようになっていました。
ちょうど同じ頃、私、ヨガをやってみたかったんですよ。
でも、近所のカルチャーセンターでは面白くない。
だったら、ジャズ喫茶に行くついでに、京都で習ったらいいんじゃないか!
と思いついちゃった(笑)。
たままたインターネットで探したら、すごく良さそうな教室を見つけたんです。
それが『Studio BINDO』。
先生はアメリカ人で、奥様が日本人。
町屋を改装した素敵なスタジオで……。
すぐに申し込みをして、
朝からヨガに行って、昼間はジャズ喫茶に立ち寄り、大阪に帰る、という生活が
始まりました」。

 

食べることが好き、旅が好き。
アンテナがピピッと反応すれば、すぐに行動する。
そんな西村さんの行動があってこそ、この後、町屋を借りるという
大きな決断をいとも簡単に成し遂げられたのかもしれません。

とにかく、西村さんと話していると、こちらまでワクワクと楽しい気分になってくるのです。
ジャズ喫茶も面白そうだし、素敵なヨガスタジオをちょっと覗いてみたい……。

一緒にいる人までワクワクが伝染する……。
それが西村さんの明るさ、そして開いた心のパワーのよう。

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↑ここが、今も西村さんが通っているヨガ教室

このヨガ教室に東京から通っている一人の女性がいました。
彼女は、「これからヨガがやりたい!」と仕事を辞めて、京都に引っ越して
きたそうです。
「仲が良かったお友達が亡くなって、命の限りを感じたそうです。
自分ももっと自分のために生きよう!って思ったんですって。
ちょうどその頃、私も両親が立て続けに亡くなりました。
もう実家もなくなったし、離婚の時にマンションも手放して、
賃貸マンションで暮らしていました。
このまま、ここで暮らすのもなんだか違うよなあと思って、
『私、どこに住みたいんだろう?』と考えた時
『京都もありかもな……』と思い始めました。
まさか町屋に住むとは思ってもいなかったんですけど」

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そんなとき、ヨガの先生が海外に修行に行くことになり、
奥様がちょうど出産したばかりだったこともあって、子守をするために泊まりに行きました。
「奥さんが妊娠されていた時から、しんどかったらご飯作りに行きますよ〜って
言っていたんです。出産後2〜3回お手伝いに行っていましたね」。

ここで、「世話焼きスイッチ」がオン!
「誰かのために何かをしてあげたい!」
と西村さんが行動を起こす時、必ずいい風が吹きます。

「『京都に住みたいなら、隣の家が空いてるし、不動産屋さんに聞いてあげるよ』
と奥様が言ってくださって。
でも、隣の物件は家賃が15万〜20万と高かったんです。
『無理だなあ、5~6万であったらなあ』って言っていたら、
ポンと出てきたのが、今住んでいるこの家でした。
不動産屋さんは、
『大家さんがもう高齢だから、手入れはしないと言っているし、
住むにはかなり厳しいかもねえ』とおっしゃっていました。
見に行ってみると、畳は真っ黄色でヘナヘナ。かなり古くて痛んでいました。
でも、風情はあって……。
家賃が5万円だと聞いて、もう即決しましたね(笑)。
その場で『借ります!』って言いました」

なんとなんと!
その決断力には驚くばかり!

きっと西村さんは、「そういう時期」にきていらっしゃったのだと思います。
ずっと子供たちのために働いてきて、
人生の後半に差し掛かり、
これから歩いていくであろう道を、坂の上から見下ろしてみた……。
そんなとき、「このまま」と、「動いてみる」という分かれ道が目に入り、
「動いてみる」という細い道の先に
京都の暮らしがキラキラと輝いて見えた……。
そんな感じ。

でも、多くの人は、「きっと楽しそう」と思っても
なかなか行動を起こすことができません。
西村さんが、「エイッ」と飛ぶことができたのは、
これまでそういう歩き方をしてきたからこそ。
人は、無意識にでも「行きたい方向」へと準備を整えているもの。

次回は、これまでの西村さんについて伺います。

 

撮影:近藤沙菜

 

 

 


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