日々のこと

「託す」ことで自分を変える

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本を読むきっかけはさまざまです。
たまたま書店で見かける。誰かがいいと言っているのを聞く。
SNSで見つける。などなど。
偶然知った1冊が、思いもかけない発見を与えてくれ、
人生の中で欠かせない1冊になる。
そんな出会いって不思議だなあ、すごいなあと思います。

 

石川直樹さんの本を読もうと思ったのは、
J-waveに出ていらして、語っていらしたことが心に残ったからでした。
お名前は知っていたし、写真家で、文章も書いていらっしゃるぐらいの知識はあったけれど、
著作を読むのは初めてでした。

 

辺境から都市まで、世界各地を旅しながら、写真を発表している石川さん。
この本は、カナダ、アラスカはど北極圏とその周辺地域「極北」を旅した時のエッセイです。

20歳の時に初めて登頂したアラスカのデナリ山が石川さんの原点。
どうして、そんなに危険な思いをして、山に登るのか?
厳しく、美しい自然と、たった一人で向き合った時に
石川さんが見たもの、感じたことが、本当にみずみずしい素晴らしい言葉で綴られています。

この中でとても印象的なページがあります。
大学に入ったばかりの頃、雑誌「SWICH」の星野道夫さんの追悼特集号の
ページをめくるうちに、
「なんだかいてもたってもいられなくなり、ぼくの頭の中には
アラスカの原野に吹く風やユーコンの大きなる流れが渦巻き始めた」
そうです。

そして、ユーコン川下りをやり遂げようと決意。
たった一人で、折りたたみカヌーを背中に担いで、キャンプ用ぐを目一杯詰め込んだバックパックを
持って現地へ。
これが、大学1年生の行動なんて、信じられません!

川辺でカヌーを組み立てて、滑り出す、その瞬間の描写がもう、本当に素晴らしいのです!

「こんなカヌーで本当にユーコンを下れるのだろうか……
と先のことが急に不安になり、恐ろしくなっていく。
僕はたった一人で川を下ろうとしているのだ。
沈没しても、熊に出会っても誰も助けてくれる人はいない。
意を決してパドルを河岸に押し付けると、カヌーが無言で水面を漂い始めた。
(中略)
その時、何かがふっきれた。これから川の上での生活は、
全て自分の行動にゆだねられている。自分は自由だ、と感じた。
二十歳そこそこの若者が考える自由なんてたかが知れているのだが、
この時は本当に全てから解放された気分だった」

 

まったく人気のない大自然の中に一人佇み、
これから先、どうなるのかも全くわからない……。
そんな中で、カヌーに乗り込み、
パドルで河岸をひと押しすれば、確かな岸辺を離れて
川を進み出す……。

その一瞬のどんなに怖かったことか……。
想像するだけで、心が震えてくるようです。

でも、「えいっ」とその「ひと押し」さえしてしまえば、
そのあとに、圧倒的な「自由」が訪れる……。

石川さんの感じた「自由」と「開放感」が、ひしひしと伝わってきて、
ああ、いいなあ〜。私もそんな「自由」を味わってみたいなあと
しみじみ羨ましくなったのでした。

 

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私はユーコンまでは出かけることはできないけれど、
もしかしたら、これから進んでいく先に「ユーコン的」なものに出会うことは
あるかもしれません。
まだやったことがないこと。知らない世界‥‥。

努力や意志で自分を変えることはなかなか難しい……。
それよりも、「その環境」に自分を放り込んでみたら、
不安や、ジタバタや、摩擦が自然に起こって、
それと背中合わせにある「まだ見ぬ世界」への扉が開くのかもしれない……。
そう考えると、なんだかワクワクしてきました。

そういえば、最近新しい場所に出かけることが減ってきたなあと、
はたと思い当たりました。
「心が動く」ためには、
自分を丸ごとどこかに連れて行かなくてはいけないのかも。

そうやって、どこかに、自分を「託す」ことで、
自分を変える、という方法があることを、この本を読んで教えてもらった気がします。

この春は、ちょっと身軽に出かけてみようかなあと思っています。

東京は、今日は気持ちがいい晴れです。
みなさま、いい1週間を。

(上の写真は、先月訪れた大洲の肱川です)

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