天へ登るはしご

 

 

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先日、「いちだとさかねの往復書簡」で、
原稿を書くときのリードやキャッチの考え方について
「想像力」と「変換力」が大事、と書きました。

 

「写真で見えることは書かなくていい」

とか

「ときには、取材したまんま書くよりも
まったく違う方向から説明したり、
違う言葉で表現したほうが、
「ほんとうのこと」が伝わることもあります。
「おいしい」ということを伝えるのが、
どんな調味料を使い、どうやって作ったか
という「事実」ではないように……」

とか。

そうしたら、「大人になったら着たい服」の取材でお世話になっている
兵庫県西宮市のセレクトショップ、パーマネントエイジの林多佳子さんが、
メールをくださいました。

ご本人の承諾を得て、少しご紹介します。

「往復書簡、うんうんと首を振ってます。

商品のタグに書いてあることを説明してもダメ。
(中略)

長年いっぱい商品を見てきて、
この子はどこがいいのかなあ、
とあれこれメリット、デメリットを合わせて、
いちばんいいところを、心に響いてほしいと、
セールストークを考えてきました。(失敗もしたけど)
今となってはボケ防止になってます(笑)

永遠の課題です。私ももうひと頑張りします」

 

うわ〜〜!!と感動してしまいました。
ライターとしてのキャッチやリードの書き方を書いたのに、
まったく違うファッションの世界でも、
おんなじなんだ〜!って。

 

以前は、取材というと、料理家さんやスタイリストさんなど
暮らしまわりのことを仕事にしている方が多かったのですが、
最近、まったく違う業種の方の話を聞く機会が増えました。
科学者、経済学者、アスリート……。
そうすると、互いの世界はまったく違うのに、
みんな同じことを言ってる!
と驚くことがあります。

 

ひとは、みんな天の上にある「ほんとうのこと」へ登る梯子を
持っているのだと思います。
その梯子は、人それぞれ。
音楽が好きな人は、音楽という梯子。
料理がが好きな人は、料理。
私は言葉。
ある人は、数学で、ある人は走ること。
またある人にとって子育てかもしれません。

私は本を読んで「なるほど〜」と感動することがしばしば。
それは、「言葉」によって真実を発見しているから。
でも隣の田中さんには、まったくその言葉は響かないかもしれない。
その代わり、田中さんは音楽が大好きで、
新しいCDを聞いて「う〜ん、いいな〜」と心から感動し
その中から真実を導き出すのかもしれない……。

いろんな梯子があって、いろんなアプローチがあるからこそ、
世の中は面白くなるんだろうな〜。

 

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林行雄さん、多佳子さんのおしゃれをまとめた本。
「毎日の大人服」

 

 

 

 

 

 


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