人から注意されたり、悪い評判に傷ついたり。その後に……。

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この連載「もっと早く言ってよ!」は、ずっと前から知っている、と思っていたことなのに、
この年齢になって「あ、そうか!」とやっとわかった気がする体験を、
50代の私が、20代だった私に伝えるつもりで綴っています。

 

 

上司にちょっと注意されたり、同僚の噂話が耳に入ったり……。自分が悪く言われることに、ノリコさんはすご〜く弱いんだよね。そんなに気にすることでもないのに、胸の奥がずっとモヤモヤして、言われた言葉がぐるぐる回って、夜布団に入ると涙がツ〜ッと出る……。そんな「気にしい」の自分を卒業したいのに、なかなかできない。

あのね、私も未だ「気にしい」だけど、かつては吹っ切るのに1週間かかったのが、最近では1〜2日ぐらいで立ち直れるようになりました。それは、「私」が悪いのでなく、「私がやったこと」が悪かった、と切り離して考えることができるようになったから。例えば、上司に「あの人との接し方に、もう少し気配りが必要だったよね」と注意されたとする。今までだったら、「私って本当にだめだ」と落ち込んで、「ああ、あの上司に私はこんなヤツだと思われちゃったかな」なんてことにまで気を回しすぎて、なのにプライドが高いもんだから「でも、私は……」と自分を正当化する言い訳を考えたり、挙句に「あの上司は、私のことなんてわかってないんだ!」と恨んだりする。
でもね、上司が指摘したのは、「私がやっちゃったこと」だけなんだ。だったら、それを二度とやらなければいい。気をつければいいだけ。何も「私」を否定されたわけじゃない。ノリコさんも、そこを分けて考えてみれば、きっともう少しラクになるはず。

それでも、自分の悪い評価や評判に傷つくこともあるよね。それは、本当に辛い経験だと思います。でもね……。今までの私の人生を思い返してみれば、そうやってガ〜ンと落ち込んだ時が、足を止めて自分を見つめ直し、考える時でした。打ちのめされて、落ち込んで、悲しくて、悩むからこそ、人は「考える」。だから、悪い評価を受けたときが、つまり傷ついた時が、チャンスなんだよ。

それはね、上手く生きようとしないほうがいい、ってことでもある。「悪口を言われないように」「人から悪い評価を得ないように」と「そこ」を避けて、日の当たる道だけを歩いていると「考える」機会を失ってしまうんだよね。

私もまだまだ「気にしい」で、打たれ弱くて、これからもメソメソする日があると思うけれど、そうなったら「これは、きっと神様が「考える時間」をプレゼントしてくれたんだな」って考えるようにしよう、って思っています。

 

思いっきり落ち込んで、やっと少し元気になった日、空を見上げて「さ、がんばろ!」って思えたら、きっと一つ階段を登っているんだと思います。

 

 

写真の陶人形は阿部太一さん作です


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