美しきワガママンたち

自分の心が喜ぶことを 「スロウな本屋」小倉みゆきさん vol3

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岡山で「スロウな本屋」を営む小倉みゆきさんにお話を伺っています。
vol1では、小倉さんと私の出会いを。
vol2は、小倉さんの書店との繋がりの始まりをご紹介しました。

離婚後、故郷の岡山に戻り、大型書店で働き始めた小倉さん。

ある時、友人が野外イベントを主宰することになり、
「話を聞いていたら、私も出てみたいなあと思って」
と自分が持っている本をかき集め、恐る恐る出店してみたそうです。

 

「最初は無我夢中で本を持っていっただけだったんですが、
意外にみなさんたくさん本を買ってくださって。
そうしたら、別の方が『今度こんなイベントあるけどうちにも出ない?」と
声をかけてくださって。年に2〜3回、イベントに参加するようになりました」

 

この初めてのイベントにたまたま立ち寄ってくださったのが、木工作家の山本美文さんでした。
山本さんに誘われて、倉敷で開催されるクラフトフェア
「フィールドオブクラフト」の実行委員をやってみることに。
ここでも、小倉さんはクラフトに特化した選書をし本屋としても参加していました。

こうして、あっという間に7年が経ちました。

「イベントに出るたびに、『お店はどこにあるの?』と聞かれて。
最初はそれを褒め言葉として受け止めていたんですが、
よくよく考えてみたら、私って『いつかやりたいんです』って
ずっと言っているなあと思ったんです。
このままだったらいつまでたっても踏み出せない。
それで、知り合いたちの中で、『お店の場所を探します』って宣言したんです」。

 

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なかなか「これ」という物件が見つからず、
1年ほど経ってやっと巡り合ったのが、今のお店がある長屋でした。

「6〜7年空き家だったみたいで……。
ちょっと考えさせてくださいと言って、
勤めていた大型書店から自転車で10分ほどの位置だったので、
通勤の前後に立ち寄って、界隈を歩き回りました。
そうしたら、早朝保育園に送り出す人がいたり、
会社員の人も結構歩いていたり。意外にちゃんと生活している気配が見えたんです」

ただし、かなり老朽化して薄暗くて……。

「でも、いろんな物件を見ましたけれど、ここだけが、本屋の風景が浮かんできたんです。
ここをレジにしてとか、ここに棚を作ってとか」

 

こうして、物件を借りることを決定。
1年間は大型書店に勤めながら、休みの日に通って壁に珪藻土を塗ったり、ペイントしたり。
友人に助けてもらいながら手を加えていったそう。

 

「同じ長屋の一軒が、カフェに改装するから畳は処分するけどいる?と声をかけてもらって
『いる〜』といただきにいったり(笑)。
だから、今の和室、全部畳の縁の模様が違うんです」と小倉さん。

 

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小倉さんは、どちらかといえば物静かな方です。
仲間とワイワイ改装する、という姿がイメージできなくて
「小倉さんって、そんなにオープンマインドな人なんですか?」と聞いてみました。

すると……。
「いえいえ、全然! でも、本当にあの1年間は不思議な時間で……。
丁度いいタイミングで、丁度いい人が現れて手伝ってくれるんですよね。
ホームセンターに連れていってもらったり、知り合いの大工さんを紹介してくれて、
その人が無償でトンカン縁側の床を貼ってくれたり。
みんなどうしてこんなに助けてくれるんだろう?って思いました」

私は人に何かを「してもらう」ということが本当に苦手です。
でも、「これをやろう!」と腹をくくったとき、
そこには「受け取る」覚悟も生まれるのかも、と思いました。
「こんなことお願いしたら申し訳ない」など、遠慮している暇なんてない!
目的に向かって、ダッシュしなくちゃいけないなら、
差し伸べてくれる水を飲み、バナナを受け取って、
「よし!」と足を進めなくちゃいけないんですから……。

 

3か月ほどで仕上がるかと思いきや、リフォームに1年もかかってしまいました。
「早くオープンしなきゃと焦ったりしなかったの?」と聞くと、こう答えてくれました。

「行き当たりばったりというか、焦っても仕方がないというか……。
離婚して、心がどん底に落ち込んだ時から、
私は『心が喜ぶことをしよう』って思うようになったんです。
だから、リノベーションも楽しみながら、って思っていましたね」

 

何かを始めようとする時、つい急いだり、結果を望んだりするものです。
でも、小倉さんの歩みはまさに「スロウ』=ゆっくりでした。

もしかしたら、何かを成し遂げるためにかかる時間は、
最初から決まっているのかも?とこの頃思います。
いくら急いでも、「それに必要」な時間は、決して縮まらない……。
どんなに焦っても、1時間は30分には縮まりません。
だったら、1時間にちゃんと向き合うことが大事なのかも。

そして、前が見えない時の、唯一の道しるべが
「心が喜ぶこと」なんだ、と教えていただいた気がします。
自分がワクワクときめく……。
それは何よりの力となって、自分を支えてくれます。
でも、成功や、計画通りいくことや、評価ばかりを気にしていると、
いつのまにか、その喜びの前を素通りしてしまいます。

私も「心が喜ぶこと」をもう一度探してみたいと思ったのでした。

 

 

次回は、「スロウな本屋」ってどんなところ?というお話を伺います。

 

 

撮影/藤岡寿美

 

 

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