有松絞りから生まれたネックレスに出会いました

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先日、とても素敵なアクセサリーに出会いました。

布でできていて、ツンツン尖った不思議な飾りがついています。
珊瑚のようでもあり、いったいこれはなんなのだろう?と思ったら……。
なんと日本の伝統産業のひとつ「有松絞り」なのだとか!

このネックレス、身につけてみるとより素敵なのです!
モデルがワタクシで恐縮ですが、こんな感じ!

 

 

 

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有松絞り……。 聞いたことはあるけれど、確か着物や浴衣を作る際の絞り染めの一種だったよなあ?
そう思っていたら、これは「cucuri(ククリ)」という有松絞りの産地から生まれた、
全く新しいアパレルブランドだと知りました。

「一田さん、有松に行ってみませんか?」と誘われて「行く、行く!」と産地を訪ねることになりました。
名古屋から在来線に乗り換えて20分ほど。もっと遠い田舎町なのかと思ったら、意外に近くてびっくり! 駅を降りて少し歩くと、有松の美しい街並みが見えてきます。

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ここで「cucuri」を立ち上げた(株)山上商店の山上正晃さんにお話を伺いました。

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山上さん:下絵を描いて、型紙を作り、その型紙を布に当てて専用の染料で布に模様を描きます。この模様は糸で生地をくくるための目印の役目を果たします。糸でくくって、くくったものを染色し、また糸を抜いて、最終的には湯のしを仕立てるんです。

 

一田:うわ〜、すごい工程がたくさんあるんですね〜!

山上:しかもこれが全て専門職なんです。

一田:えっ? 型紙を作る人、くくる人、染める人って、全て違うということですか?

山上:そうなんです。

一田:え〜!!びっくり! それで山上さんの役目はどんなものなんですか?

山上:僕らメーカーは、お客様と打ち合わせをして、生地を選び、柄を作って、全部の職人と打ち合わせをして……と全部を管理するのが仕事です。産地元メーカーと言いますが、「絞り屋」とも呼ばれています。

一田:このネックレスはどうやって作られているんですか?

山上:ヒートセットといって、くくった生地を蒸すんです。26年ぐらい前に、世界的に活躍する日本の某デザイナーさんと共同開発しました。ちょうど国際絞り会議が名古屋で開催され、絞りの形状を残したらいいんじゃないか?というテキスタイルデザイナーさんの提案を受けて、僕らが技術開発したんです。

私も、取材で色々な伝統工芸を取材した経験がありますが、手間や時間がかかる手仕事は、残念ながらだんだん廃れて、後継者不足に悩むのが共通した現状でした。

それを、なんとかして残していくためには、「みんなが欲しい」と思う形にしなくてはいけない……。
そこで、山上さんが「もっと普段の生活に活かせる、日常の中の有松絞りを」と考え出したのが、くくったままの形を「ヒートセット」によって、そのまま残すというデザインだったのです。
そして、この技法をアクセサリーにしたり、シャツやスカーフに取り入れたり。

今回その商品を見せていただいたら、びっくりするようなモダンなデザインでした。
しかも一つずつ手でくくる、という手間暇自体が、
こんなにも力強い「デザイン」となるんだなあと知ったのでした。

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↑このブラウスは、えりの部分だけの「くくり」の技術が生きています。

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↑こんな細やかな「くくり」のシャツは、パーティーにもぴったり!
この一つ一つのちっちゃな「ツノ」を職人さんがぜ〜んぶ手作業で糸でくくったのかと思うとため息が出ます。

「伝統産業」だからすごいのではなく、それを「今」に変換して、みんなが「欲しい」形にする。
それが山上さんの立ち上げられた「cucuri」でした。
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次回は、有松絞りの歴史をもう少し詳しく伺います。

 

この「cucuri」を初め、全国の素材屋さん、縫製屋さん、加工屋さんなどの「工場」で作られたファクトリーブランドを集めた、新しいコンセプトのセレクトショップが生まれるそうです。

その名も「工場十貨店」。

そのポップアップショップが日本橋三越本店で開催されます。
上記の写真のアクセサリーやブラウスも販売されるそう。
みなさま、ぜひ今に変換された素晴らしい手わざを見にいらしてくださいね〜。

「工場十貨店」
日本橋三越本店本館4階 リスタイルレディ
9月19日(水)〜10月2日(火)

 

 

撮影/清水美由紀

 


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