美しきワガママンたち

風に吹かれて、流れに身を任す。それが私らしさかな。広川マチ子さん vol4

 

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吉祥寺で、ヴィンテージ生地や雑貨の店「Socks」、「Socks*ciao」を
その後、現代アートを展示する「A-things」、
セミオーダーの服を中心とした「A-materials」を営んでいた広川マチ子さんに
お話を伺っています。

 

ニューヨークから帰国したマチ子さんは、吉祥寺の「Socks*ciao」に店頭に立つようになります。
でも、ここで終わらなかったのがマチ子さんらしさ。

「私って、何年か同じ場所にいると、
ムラムラと、もう一度新しいまっさらな空間が欲しい!と思ってしまうんです。
自分の中に『いままでと違う何かがやってみたい』
『風に吹かれるままに、自分を育ててみたい』と思いが芽生えてくるんですね。
そんなときにはいつも、胸の中にいる節子先生の
『マチ子ちゃん、やってみれば』という声が聞こえてきます。
5年経って店を大正通りに移転。そのあとまた5年経った頃に、今度は中道通りに移転して、
『A-materials』をオープンしました。
私ね、ずっと洋服のセミオーダーをやりたかったんです。
おしゃれ大好き!でしたから。
私の母は洋裁を仕事にしていて、
私は、子供の頃から好きな生地を買って、好きなデザインの服を作ってもらっていました。
幼い頃から『着たいものは自分で作る』というレッスンを受けていたようなものですね。
ただ、完璧な腕で縫ってくれる人がなかなか見つからなかったんです。
やっと素晴らしい方と出会えたので、だったらお店の名前も変えて、セミオーダーをやろう!と思って」

さらに5年後には、成蹊大学近くのケヤキ並木に一目惚れして移転、
そうして、2017年2月にお店をクローズしました。
今は知り合いの間だけで、セミオーダーで服を作っています。
実は、私も数着マチ子さんに見立ててもらい、ヴィンテージの生地でシャツやパンツを作ってもらいました。
これが、楽しい!

 

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マチ子さんと一緒にいると、マチ子さんのリズムにどんどん心が共鳴し、
普段はなかなか自分の枠を外せない私も、
自分でもびっくりするような、柄や色の生地を選んでしまいます。
そして、それを仕立ててもらって着てみたら、鏡の中に今までとは全く違う自分がいる……。
マチ子さんのセミオーダーってこういうことなのか!と身をもって実感したのでした。

そして、何を作ろうか?と生地を選んだり、採寸をする間のマチ子さんの真剣なことといったら!

お客様の個性を見抜き、その人が一番キラキラできる方法を一生懸命考える……。
そんな姿を見ていると、
マチ子さんはワガママンなふりをして、実は全くワガママンではないんだ、
と感じずにはいられませんでした。

 

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お店をクローズした今、次なる夢は、東京以外の街に住むこと。
「京都は、連れ合いの故郷なので、選択肢の一つですね。

今まで、お店が土、日曜びに休むことができなかったので、
連れ合いの講演会に行けない。シンポジウムも聞きに行けない……。
そして、彼が書いた本もゆっくり読むことができない。
このまま私が死んでしまったら、ここだけは後悔するな、と思ったんです。
これからの時間は、連れ合いとの接点が今まで以上に濃くなる『なにごとか』をやりたいなと思っています。
連れ合いの描いた、不思議な魅力のドローイングブックも作りたいし……」

「マチ子さんは、『表現者になる!』と言っていたのに、
自分が主役になるのではなく、いつも誰かの後ろにいるんですね」と言ってみました。

すると……。

「だって、そっちの方が楽しいもの。
あのね、影にいたって自分を表現できると思うの。そこが一番面白いところ。だって監督みたいなものでしょう?」とマチ子さん。

 

「舞台に登った人を応援しても、褒めてもらえるのは踊った人だけですよね?
自分が踊って、評価してもらわなくてもいいんですか?」とさらに聞いてみました。

 

「ああ、私評価なんていらないから!」と顔の前で手をパタパタと振ったマチ子さん。
「いいのよ、評価なんて、自分でするから!」と大笑い。

「これでいいの。だって今何にも後悔していることはないし、悩んでもいないし、
今の自分が一番いいと思ってる。
今日やることはちゃんとやったし、このまま目が覚めなくてもいいって思います。
半世紀以上の時間を過ごしてきた今、振り返れば、偶然起こったことが実は全て
必然だったのでは?と感じています。きっとこれからもそう……。

渡り鳥って、気流に身を任せているでしょう?
でもちゃんと、どこへ行くかは分かっている。
風に吹かれて、流れにのる。それが私らしさかな」。

 

確固たる自分を持って、決してブレないマチ子さん。
一方で、さっきまでの衣装をさらりと脱ぎ捨て、吹く風に軽やかに飛び乗るマチ子さん。
一見相反する二つのことは、表裏一体でした。
ちゃんと自分を持っているからこそ、すぐに自分を捨てられる……。

いつも「私らしさが……」とか「私の目標は‥‥」とガチガチに考えがちな私は、
マチ子さんに、「強いことはしなやかなこと」だと、教えてもらった気がします。

自分の足元ばかりを気にしていたけれど、
目線を上げて、鳥のように大きな世界を伸びやかに見つめてみたくなりました。

 

撮影/清水美由紀
着付け/大野慶子

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