いちだ&さかねの往復書簡

いちだ&さかねの往復書簡 VOL11 その一言を書き留める

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いちださま

Vol.10 の中で、

「伝えることが複雑であればあるほど、読者の心に届くまでに時間がかかる」
という一田さんの言葉がとても印象に残りました。
……というのも、いつも取材をした後、原稿を書く時に感じていたのは
「全てを表現しきれない哀しさ」でした。

 

そのページでは書ききれないほどの質問に答えていただいている訳ですから、
その方の暮らし方のみならず、生き方に一番影響を受けているのは紛れもなく「私」なわけです。
例えば、今回のページには掲載できないけど、あの収納方法よかったなー。早速マネさせてもらおう……
といった具合で。
でも読者に全ては届けられない……。
そこに、申し訳なさというか、聞きっぱなしになってしまいすみませんという、
どこか取材先の方に対する罪悪感も少なからずありました。

でも、まずは何よりも「手にとめてもらう」誌面づくりをしなければ、
全てではなくその一部だって届けられない……。
何かを削る作業というのは、取材先のみならず、
読者に対する書き手の「真のやさしさ」なんだということに改めて気付くことができました。

 

では、次の質問です。

毎回取材時に手書きでメモするのですが、
恥ずかしながら、しばしば自分の走り書きしたものがぐちゃぐちゃすぎて、
どんな内容だったか読み返す時に苦労することがあります。

以前一田さんの「暮らしのまんなか」取材に何回かご一緒させていただいた時のメモ書きが、
単語をさらさらっと手書きで書いていた記憶があり、
とてもスマートな印象を受けました。
私は取材先の方の言葉を一期一句逃すまいと、
一文そのまま丸暗記するように長々とメモをとってしまうこともしばしばあるのですが、
一田さんのメモを書くときのコツがありましたら教えてください。

また、「暮らしのおへそ」の取材時は毎回録音するとお伺いしたことがあるのですが、
それでも手書きでメモを補足することはあるのでしょうか。合わせて教えてください。

 

さかねさん

 

いや〜。私の取材ノートだってぐちゃぐちゃですよ。
きっと誰も解読できないと思います。
私だって、坂根さんと同じように、「う〜む、これなんて書いてあるんだろう?」って
首をひねることもしょっちゅう。

相手の話を聞き、うなずきながら、次の質問を考え、
かつメモを取るって本当に至難の技ですね。

書き留めることばかりに一生懸命になっていると、
相手のおっしゃっていることの言葉の裏と言いますか、
真意を汲み取ることができなくなってしまいます。
人は、言葉で語りながら、本当に言いたいことは、その言葉だけでは言い表せない……
というジレンマを抱えているものだと思います。
だから、今、この人はこういうことを語っているけれど、
本当に言いたいことはこれなの?と一緒に考えながら聞くことが大事だな〜と思っています。
だから、一緒に考えながら聞く。
「えっ、それってどういうことですか?」
「う〜ん、それってあのこととはどう違うのですか?」
私自身が「わかりたい」から聞いているのですが、
その人が考えをまとめる助けになるように、
質問を差し込んでいければ理想だなあと思っています。

が!
同時に書き留めることもとても大事。
私は若いころ、質問ばかりに一生懸命になって、
書き留めることがおざなりになってしまっていた時期があります。
「覚えられることだけがきっと重要なことなんだ」なんて言い訳をしたりして……。
でも、ある時からやっぱりメモすることにも力を入れるようになりました。
(どうしてだったのか、きっかけがどうしても思い出せないのですが)

人の記憶なんてあやふやなものです。
特に私は、本当にボロボロといろんなことを忘れていくので……。
取材時には、無意識に「大事なこと」と「枝葉のこと」を分けて
「大事なこと」だけをメモするものだと思います。
でも、原稿を書く時、意外や「枝葉のこと」が必要だったりする…….
お話を聞いている時には、理解できなかったけれど、
あとで、全てのお話を統合して、自分でもう一度「その人の人生」を考えてみた時、
ああ、そうか、あの人があの時こう語ったのは、
そいういう意味だったのか!
と気づいたりします。
そこに「枝葉」が絡んでいたりするのです。
だから、意外や小さなエピソードなどの「枝葉」も大事だったりします。

この両方を両立させるなんて、本当に難しいですよね。
理想は、やっぱり録音し、言葉を聞き逃さず、後から書き起こすことだと思います。
ただ、私は、毎日取材があるので、
全て録音していると、それを書き起こす時間が膨大になり、
追いつかなくなってしまうので、
がっつり向き合ってインタビューするとき以外は、
取材メモで対応しています。

コツといえば、
一言一句全てを書き留める時と、要点を書き留める時、
とメリハリをつける、ということでしょうか?
その方が語ること全てを録音のように書き留めるなんてとても無理です。
だから、例えば、その人が歩いてきた道のりを語る時は、要所要所のキーワードを
時系列にメモする。
ただし、その人の転機となったこと、
その人が想いや考えを語ってくださった時には、一言一句を書き留める……。
といった具合でしょうか。

「だいたいこういうことをおっしゃっていた」と要点はわかっても、
「その人」でしか語れない言葉というものがあります。
その一言一句を逃さず、キャッチして書き留めることはものすごく重要です。
その「一言」を聞き出した時、「よし、これでかける!」と思います。
その言葉がキラキラ光って見えるぐらい(笑)

 

そんな言葉さえ拾えたら、
多少ノートがグシャグシャだって、
他人には解読不可能だっていい!って思います。
でも、時々とても整然とした取材ノートを取っている方を横目で見ると
すごいな〜と思います。
私も日々精進です。

 

 

 

 

 

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