中川正子さん トークイベント報告3

 

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「外の音、内の香」主宰、中川正子さんのトークイベントのご報告です。
テーマは「自分をプロデュースするって?」

vol2では、フォトグラファーとして中川さんが自分を「中川正子化」する方法について伺いました。
今回は、妻として母としての中川さんのお話です。

一田
前回は、撮影の仕事の中に「中川正子」をバンバン入れていく、っていうお話だったけれど、
写真家としての中川さんじゃなくて、彩源くんのおかあさんだっり、主婦だったりする中川さんにも
「中川正子化」っていうのはあるんですか?

中川
私ね、何をするにも「やった感」っていうのが必要なんです(笑)。
料理でも洗濯でも掃除でも、自分の中で「100%満足できるものができた!」っていう
満足感が欲しい。
それも中川正子化の一部かなあ。
でも、やっぱり人とかかわるのが好きだから、何かしら外へ出て行っちゃうかも。
地域のコミュニティーとか、バザーとかはすごいはりきるし。

一田
認めてくれる人が必要だってこと?

中川
う〜ん、認めてくれる人がいればいたで嬉しいけれど、それよりも自分で自分を認めたい、っていうのが
すごく強いと思います。
いつも「自分」なんですよね。
みんなが褒めてくれても、自分の中でちょっと手を抜いているって知っているときは、
自分が本当に許せないし、
逆に、いつもは180点だしているけど、今回はたまたまテイストがあっていないかったから100点しか出せなかった……っていう時でも、自分ではやることはきっちりやった、と思えば「OK」って思える……。

一田
それは料理作ったり、子育てでも?

中川
子育てに関しては本当にそうでしたね。
180点のホームランを打ち続けたいと思ったけど、もう毎日眠たすぎて、家もぐちゃぐちゃだし。
できないことがバンバンでてきたので、自己合理化をしたんです。
無理しすぎてピリピリしてるのも、よくないから、
「今週はハードだから、朝ごはんは作らないよ〜」とか、
1日が失敗した、と思っても、1週間でトータルで見ていい感じだったらいいやって。
自分の中でどんどん基準を変えていくんです。
夫に褒められたり、息子が喜んだり、という基準ではなく、
私が採点しているって感じですね。

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一田
なりたい自分をイメージして、目標を設定する、ってことを常にやっているっておっしゃってましたよね?

中川
『マーマーマガジン」の服部みれいさんに、いろんなことを教えていただいたんですが、
そのひとつがアファメーションというもの。
月に1回、新月の前後にこれから1か月の私が「こうなる」という目標というか、
ビジョンのようなものを10個、
宣言として紙に書くんですよね。
「写真集に必要な写真を完全に選び切ります」
とか
仕事のタスクのような予定も書くし、
ちょっと内面的なことも……。
たとえば「私はこの1か月も、いつもみたいに出会いをぜ〜んぶ大事にして、
会う人のいいところがいっぱい見えて、楽しい楽しい1か月を送ります」
みたいなふわっとしたこととか……。
できなくてもいいんです。
「毎朝5時に起きます」って書いたけど、起きれる気がしなくて
『起きれるときだけでいいので、元気よく起きます」って書き直したり(笑)

一田
長期的な計画みたいなことも書くの?

中川
私はあんまり長期的な目標を立てるタイプじゃないんだけど、
たとえば、写真集を出すとか、
もし、これをやったら大きな変化があるかも……と思うときは、
旗をぐさっと遠くの山に立てるみたいに、
「何年何月までに、私はこうなっている」という目標を立てて、
そこに合わせて10個ずつの決めごとをやっていく、というのはありますね。

そうすると、だいたいそこへたどり着くことができる。
ちょっと遠い目標でも、それをイメージしたときに、
そこにちゃんと自分が見えれば大丈夫なんです。

大したことはやってないけど、10個ずつ決めていくというのはすごく大事かも。
今の自分をすごく客観的に見れるし。
1か月に1回だけ、自分に聞く……って、効果大なんです。

 

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一田
目標を決めるときに、とっても具体的に妄想するって言ってましたよね?

中川
そうそう!
ファッションを変えることも書くんです。
これからの私は大人にふさわしく、シックで、でもプレーンに走りすぎて個性がないっていうのではなくて、
どこか私らしいエッジがきいた服を選びます。みたいな。

一田
具体的〜〜!(笑)

中川
具体的ですよ!たとえば、ブランド名だって書いたりする。
まずは、ジルサンダーを見に行ってみようとか(笑)
「高くて買えないかもしれないけど、必ず試着しに行きます」とか、
そんな予定も書く。
それで、ジルサンダーの20万円のワンピースを着てみて、
「すごく美しいけど、買えるわけないか。またいつか来ます!」って納得するの(笑)

一田
え〜!ほんとに試着しに行ったの?

中川
伊勢丹にね。
路面店だと緊張するから。

一田
それって、試着しに行くのと行かないのでは全然違うの?

中川
そうですね。
昔ね、ドルチェ&ガッパーナのコートを試着したことがあるんです。
あ、ラグタグ(注‥ブランド古着屋さん)でですけど(笑)。
やっぱりね、びっくりするぐらいシルエットが美しかった。
尋常でなくいい女に見えるとんでもないコートで、縫製も本当にきれいで、
結構ギラギラしたブランドと思われがちですけれど、さすがイタリアのブランドっていう
感じがビンビンして……。
そんな経験があったから、全然知らずになんとなく過ごすより、一回着てみようと思って。

 

一田
ちなみにアファメーションで、旗を立てに行くとき、
身の丈の旗なのか、手が届かない旗なのか、っていうのは立ててみたらわかるんですか?

中川
最初の頃は、確かにできもしない目標を立ててましたね。
でもね、目標をたてた後に妄想する、というプロセスがすごく大事なんです。
昔は、その妄想も「いやいやできるはず」と自分に嘘をついて、できるふりをしてたりして、
うまくいかなかったんですけど、今は妄想が上手になりました(笑)
たとえばですけど、自分が写真展をするためにニューヨークに行って、そのときはどういう服を着て、
どんな感じで英語をしゃべってて、どんなお客さんが来てくれて、
そのときは、どんなスーツケースでいくかまで妄想するの。
具体的なんだけど、スライドショーみたいに、パッパッと。
そして大抵の絵が出揃ったら、
もしくは全部揃っていなくても、メインの絵は描けていたら
あ、いけるわ!って思うんです。

 

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どうやら中川さんの「プロデュース」の正体は「妄想」のよう。
豊かに妄想できる、というのはひとつの才能だと思います。
あれこれ、夢を描いてみても
「どうせ、かなわないし……」と、妙に現実的になってしまう……。
そんな人も多いのでは?

池を渡る飛び石があって、ホップ・ステップ・ジャンプ!と飛ぶとき、
うまく飛べる姿を想像して、ひょひょいのヒョイ〜!と飛べば、うまくいきます。
でも、怖くなって、そのリズムが刻めなくなったとき、
足が竦んで、うまく飛べなくなってしまう……。

妄想上手になるためには、それが実現する可能性を計算しない、
ということがポイントなのかも。
計算せずに、信じる。
中川さんは、その妄想の回路が素晴らしくクリアで早いのかもしれません。

私はどうしても、妄想しながら
片方の脳みそで、どうやったら実現できるのだろう?とか
これが実現する可能性はどれぐらいあるだろう?
などあれこれ考えてしまうのです。

世の中には、現実を捉え、計画し、考えて、準備して、
コツコツと願いを叶えていく、というプロセスがあります。
でも、それとはまったく別の次元で、
夢を叶えるという方法がある……。

その「別の次元」には、
才能も、スキルも、準備も、必要ない。
ただただ、そこには「妄想」というエンジンがあるだけ……。
考えないで、そこに飛び乗っちゃえば
きっとどこかへ到着する。
中川さんのお話を聞きながら、
私も、そんな「妄想力」を高めたいなあと思いました。

 

 

写真/近藤沙菜

 

 

 

 

 


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