ライターズ・マルシェ

「未来ではなく“今”を生きるしかない」大内美生さん vol.2

「お母さんが働くって、どういうこと?」というテーマで記事を書かせていただいています。

町田市で地域活動をしながら、
フリーランスでイベントや展示会などの企画・デザインをしている大内美生さんにお話を伺っています。

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前回は、実家の札幌に帰り、再び東京でエコリフォームの会社に就職が決まるまでのお話でした。

「自分にとって、最善なものを選ぶことができるのは、病気の経験があったからからもしれません」と語る大内さん。実は、大内さんは中学生の頃に大病を患った経験があります。

「中学2年生の時に、国の指定難病(治療が難しいため、国が患者の医療費の一部を補助する病気)
にもなっている大きな病気をしたんです。
原因は不明ですが、ある日突然歩けなくなり、立つこともできなくなりました。
寝たきりになり、生きる気力もなくしました。
命に関わるような病気ではなかったけれど、再び歩けるようになる保証はなかったんです。

自分の意思で立つことも、スプーンを持つこともできず、朝が来て目覚めても、ただ天井を見つめる日々でした。
当時、まだ小学生だった弟と妹がいたのに、母を独占してしまっているという後ろめたさもあり、
朝”また目が覚めてしまった”と思って自分を責めていました。
強い薬のせいで見た目も変わってしまい、塞ぎ込んでいました」。

多感な時期に、そんな大病を患っていたなんて…。聞いていて胸が苦しくなりました。

「この時期、何時くらいに寝ていたのか、どれくらい眠っていたのか、
どのような状態だったのかなどは、ほとんど覚えていないんです。

目が覚めて、また長い一日が始まる…
そう思うと、涙が溢れて過呼吸を起こし、酸素マスクでまた眠る、を繰り返していました。

寝ているのか起きているのか分からないような状態で、長いトンネルをずっと漂っていました。

でも、ある時、目を閉じたら、暗いトンネルの先に針のような明るい点が見えたんです。
そこに向かって必死に辿り着いたら、真っ白い世界に出ました。

目が覚めた時、病室は明るく、私は酸素マスクをつけていました。
枕元で母が何度も名前を呼んでいて、母に呼ばれて起こされたような気もします。

なんだか気分もスッキリしていて、懐かしい感じがしました。
今まで薄暗く霧もやがかかっていた視界がクリアになって、目に映る全てがキラキラして見えました。

その日を境に、目を覚めることを悲観していた自分はいなくなり、
一日一日を生きることが楽しくなってきたんです。もしかすると、単なる夢だったのかもしれません」。

不思議な体験をして、再び生きる喜びを取り戻した大内さん。治療の甲斐あって、次第に動けるようになってきました。

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“入院していても自分の身を取り囲む空間を素敵にできる”。
そう気付いてからはインテリアに興味を持つようになったそうです。

インテリアに思い入れがあるのは、実は闘病の経験があったからとは、驚きました。
そして、どんな状況下でも身近な喜びを感じることができる、大内さんの強さに感服してしまいした。

「インテリア雑誌“ティーンの部屋”を売店で母に買ってきてもらって、
退院したら“こんな風に模様替えをするんだ”と期待に胸を膨らませては、
好きな写真を切り取ってスクラップブックに貼り付け、自分だけの雑誌づくりに夢中になりました。

当時、“ティーンの部屋”で“オリジナル家具を作ります”という企画があり、
長い間ベッド生活をしていた経験を生かして、
ベッド周りにあったらいいなというものを詰め込んだ夢のベッドをデザインして編集部に応募したら、
優秀賞をもらって商品化されたんです!」と驚きの出来事も。

そして、その経験が、後にインテリアの仕事に繋がっていきました。

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私だったら、落ち込むばかりで、そんな風に前を向いていることができないかもしれません。
暗闇の中でも自分の好きなことを見つけて生きる糧にする。
大内さんは辛い経験を自分なりに消化し、今を生きる決意をしました。

中学3年生の頃に退院して美術部に入部。
「身の回りの空間を美しくできるような仕事がしたい!」と思って美術大学を目指すことに。

高校に入学してからは、東京藝術大学出身の先生がいるアートスクールで美術の勉強をしたそうです。

「病気の経験から、未来ではなく“今”を生きるしかない、と考えるようになりました。
“いつ死んでもおかしくない”と思いましたし、治ってからも、再発の恐怖に怯えました。
幸い、再発することはなかったのですが、悔いなく生きたいと思うようになりました。
私を突き動かす原点には、“やりたいことがあるなら、今やらないと。
ないなら今作らないと、何もやれないまま死んでしまう”という考えがあります。
お金持ちになりたいとか、有名になりたいとか、そんな野望は、昔からあまりないんです。
そんな不確かなものを手に入れるよりは、“今”を味わいたい」。

大内さんの「やりたかったら今やろう」という言葉に胸を打たれました。

もしかしたら、過去への後悔や、未来への不安に苛まれて、
私は、“今”をちゃんと生きることができなくなっているのはないだろうか……。

お金でもなく名誉でもなく、自分にとって本当に大切なものは何なのか、
改めて見つめ直してみたいと思いました。

そして、本当に大切なことが分かれば、あれもこれもと手を伸ばさなくとも、
本当に満足する人生を送ることができるのではないでしょうか。

大内さんは、この後、希望通りインテリア関係の仕事に就くことになります。
このお話の続きは、また次回に。

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