人と「つるむ」のは嫌いだったけれど……。

img_9514

このコンテンツ「もっと早く言ってよ!」は、ずっと前から知っている、と思っていたことなのに、
この年齢になって「あ、そうか!」とやっとわかった気がする体験を、50代の私が、20代だった私に伝えるつもりで綴っています。

ノリコさんは、社交的で明るいと言われながらも、集団行動が苦手だよね。つまり「人とつるむ」のが嫌いってこと。女子校時代は、いつも一緒に行動する女子同士のグループに入るのがイヤで「渡り鳥」だったし……。

私も今、パーティにはほとんど行かないし、あまりよく知らない人が大勢集まる食事会もパスしがちです。時々トークイベントなどに参加すると、「隣の人と話し合ってみてください」などと言われますが、それも本当に苦手……。きっと私は初めての人にすぐに心を開けないのだろうなあと思います。フリーライターは基本的に会社に所属しないので、上司や部下もいないし、必要に応じてチームを組めば、私はずっと「一匹狼」としてやっていけばいいかな……と思っていたのです。

でもね……。今回の新型コロナウィルス騒動でちょっと考えが変わってきました。先日、FM J-waveに宮本亜門さんが出演されて、「新しい生活」について語っていらっしゃいました。演劇界は、大きな打撃を受けて、オペラもミュージカルも開演できない……。そこから一歩先に進むには、演劇界にいる者同士が手をつなぐしかないって。実は演劇界は意外に縦社会で、カンパニーごとに集まって、他のカンパニーはライバルだった……。でも、競争していたら、どんどん世界が狭くなる。互いに互いを褒めあって、いいところを見つけて、一緒にできることを見つければ、今まで見つけられなかった、新しい道を発見することができるかもしれない……。私は心を込めてそう語る亜門さんの言葉に、すごく感動したのでした。

ノリコさんが「つるむ」のが嫌いなのは、不特定多数の中で、自分がどういう位置に立っているかが見えなくなっちゃうからだよね。自分が何者かがわからなくなる……。それがきっと居心地が悪いんだろうと思います。

そして、「人の目」を気にすることをやめて、「自分は自分の方法で歩いて行こう」としてきましたよね。でもさ……。私もずっと、人に振り回されるのをやめようとしてきたけれど、やっぱり仕事をしたら評価してほしいし、頑張れは誰かに褒めてほしい。そう思うのって本当に悪いことなんだろうか……? って最近考えるようになりました。

人はひとりで好きなように生きていけば、自分ひとりの「目」しか持つことができません。でも、自分を広い世界に放ってみて「どう見られるか?」を知ることは、「あの人はこう思って」「この人はこう考えて」と、世の中には、「こんなことを考える人もいるんだ!」と知ることでもある。それって、もしかしたらいいことなんじゃなかろうか? と思うようになったんです。

私と違う意見の人がいる。違う感じ方の人がいる。それを知った上で、「じゃあ、自分はどう進む?」と考えればいい。大事なのは、多様性を受け入れる自分を持っていること。その方が、両手いっぱいに選択肢を持って、「どれがいいか?」と考えるチャンスが生まれ、より自分の道が幅広く、深くなるんじゃないかなあ。

だからね、ノリコさんもこれから、自分の扉をちょっと開けてみたらどうかなあと思うんです。いろんな人に出会い、自分の心を開く、ということは、いろんな角度に置いた鏡で自分を見てみるということ。いっつも前から見ていたけれど、横から、後ろから自分を見てみたら、違う自分が見つかるかもしれない……。そしてその鏡となってくれるのが、周りにいる「人」じゃないかと思うのです。

私も大勢の人の中に入るのは、今でも苦手だけど、自分と他人の境目をもう少しあいまいにして、隣に立つ人のことを信じてみようかなと思っています。


特集・連載一覧へ