「頑張る」と「頑張らない」で多面体の幸せを

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このコンテンツ「もっと早く言ってよ!」は、ずっと前から知っている、と思っていたことなのに、
この年齢になって「あ、そうか!」とやっとわかった気がする体験を、50代の私が、20代だった私に伝えるつもりで綴っています。

20代のノリコさんは、きっと「一人前のライターになるには、どうしたらいいだろう?」と悶々としているんでしょうね。答えがなかなか見えないのに、気ばかりが焦る……。「とりあえず、今できることをすべてやろう!」と目の前にやってくる仕事を一生懸命やる。それは、若い頃にしかできない「無我夢中」という貴重な時間だと思います。

でもね、ず〜っと頑張ってきた私は、最近になってまったく真逆な価値観に出会いました。それが「人は、頑張らなくても幸せになれる」ということ。「頑張ったら、幸せになれる」という方程式を覆すことは、私にとって大事件でした。だったら、今まで何のために頑張ってきたんだろう?って……。確かに、今まで頑張って仕事をしてきて、少しずつ好きな記事が書けるようになり、好きな本が作れるようになり……といろんな実りを手にすることができました。それは、私にとって何より幸せなことでした。
でも、ふと足元を見て「だったら、私は仕事をしていないくちゃ幸せじゃないのか……」と問い直したとき、「あれ?」とわからなくなっちゃったんです。

「頑張ったら、幸せになれる」ということは、頑張って何かの「成果」を手にすれば幸せになれる、ってこと。それは、何かを「生産する」ことで生まれる幸せです。でも、若い頃の私は、今よりずっと生産性は低かったけれど、絶えずヒリヒリする不安を抱えていたけれど、あの時はあの時でキラキラ輝いてとても幸せだったなあと思うのです。つまり、ノリコさんのような20代の時期、何もまだ達成していないけれど、ノリコさんはノリコさんのままで幸せだってこと。20代の不安定な時期にしか味わえない幸せの形があるってこと……。でも、若い頃の私は、そのことにちっとも気づかなかったなあ。

私は「頑張って、幸せになる」というプロセスも大好きです。自分の伸びしろを見つけ、知らないことを知るワクワク感を知り、できないことができるようになる……。それは、何事にも変えられない喜びです。
だから、ノリコさんにもぜひ、その幸せを味わってほしい。
ただし、「頑張らなくても幸せ」ということも覚えておいてほしい。
私は、放っておくとすぐ頑張っちゃうので、今「頑張らなくても幸せ」な時間を味合う練習中です。夕飯後には仕事をせず、ソファに寝転がって本を読む……。たったそれだけのことですが、「このソファ、疲れ切って寝落ちる以外に、自分のお楽しみのために使ったこと、なかったよなあ」と最近になって気づいた次第です。もう、この家に引っ越して15年にもなるのにね……。

頑張ることと、頑張らないこと。それをブレーキとアクセルのように使い分けて、自分が手にする幸せを多面体として磨いていければいいなあと思うこのごろです。

 


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