「自分にとって必要なものをキャッチできるセンスを磨きたい」大内美生さん vol.1

「お母さんが働くって、どういうこと?」というテーマで記事を書かせていただいています。

 

今回、お話を伺ったのは、町田市でフリーペーパーを発行するなどの地域活動をしながら、フリーランスでイベントや展示会などの企画・デザインをしている大内美生さん。ご自身のセンスを活かして多方面で活躍されています。

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大内さんと出会ったのは、料理研究家・スズキエミさんの「暦ごはんの会」でした。
ハッとするような美しさと洗練されたファッションに
「この人は一体どんな人なんだろう?」と想像を膨らませました。

お話ししてみると、実は同世代であること、
かつてインテリアショップに勤務していた時期に、
私が尊敬するフラワースタイリストの谷匡子さんや平井かずみさんとも
お知り合いだったことを知り、意気投合しました。

出産され、しばらくお会いしない日々が続いていましたが、
SNSを介して、日々の暮らしを彩る手仕事品やつくり手を紹介するイベントを企画・運営する傍ら、
住んでいる街の活性化にも関わったりと、パワフルに活動しながらも、
お子さんを3歳まで預けずに手元で育てていらっしゃる姿を見ては、すごいなぁと思っていました。

大内さんが企画・運営した子供向けのイベントで再会したのをきっかけに、取材を申し込みました。

 

—多方面でご活躍されているみたいですが、今はどんなお仕事をされているんでしょうか?

「日中は本業の企画やデザインの仕事と平行して、
フリーペーパーを発行するなど町田市の地域活動を中心に活動しています。
2018年2月に同じ地域に住む仲間と共に、
市の助成金を受けて地域の魅力を発見するプロジェクトを立ち上げました。
地域の口コミ情報を元にフリーペーパーを発行したり、
周辺の気になるスポットを巡る「まちあるき」や、
地元農家さん飲食店さんの出張販売や
お裁縫の得意なママさんたちによる入園入学準備隊を設置した地元応援マーケットの開催、
映画の自主上映会など、さまざまな企画を実施して、地域にも受け入れられるようになってきました。
2018年は子連れで活動していましたが、息子が3歳になり、
幼稚園と保育園の機能を兼ね揃えた“こども園”に入ったので、活動の範囲が広がりました」。

 

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-作家さんなどの展示会を企画するお仕事をしていたのに、どうして町づくりに興味を持ったのでしょうか?

 

「子供が生まれてから、地域の状況が気になるようになってきて…。
駅前のお店がなくなってしまったり、地域の人付き合いも減ってきている状況を目の当たりにしました。
子育て中の今だからこそ、住んでいる環境をよりよくしたい。
コミュニティを作ったりして、地域の“声”を行政に届けたいです」。

“子育て中の今だからこそ地域活動”というのには納得しました。

毎日子供と家の中や近所などの限られた範囲で過ごしていると、住んでいる地域のことに目がいきます。
近所にある公園、子連れでも行きやすいお店、
あるいは信頼できる食材を揃えているお店。
ちょっとした大人の話し相手が欲しい時もあります。

気軽にお母さんたちが集まれるスペースがあれば、どんなにありがたいことでしょう。

大内さんは、町づくりに関わりつつ、
フリーランスのコーディネーター兼デザイナーとして展示会を企画したり、
ブランドのルックブックの製作をしたりしているそうです。

元々、どんなご経歴だったか気になります。

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「武蔵野美術大学で“空間演出デザイン”を専攻していました。
無印良品やパークハイアットなどの空間を手がけ、
“商空間デザイン”の草分けであるインテリアデザイナー故・杉本貴志氏のゼミにいました。
インテリアが大好きで、後に「TIME&STYLE(タイムアンドスタイル)」などの
インテリアショップやショールームに勤めることにも繋がっていきました」。

大学時代は、現在休刊中の「SEDA(セダ)」というファッション誌の読者モデルとして活躍。
当時の担当の編集さんに「インテリアなど暮らし周りの企画をやりたい」と言っては、
“お部屋紹介”ページの常連になっていたそうです。

卒業後は、「建築知識」という月刊誌を発行する出版社に編集アシスタントとして採用されました。
当時はシックハウス対策などの改正建築基準法が改正されたばかり。
エコ建材や自然派住宅がブームだったそうです。

「建築だけではなく、“ロハス”“オーガニック”などがブームになり、
マクロビオティックなど、ライフスタイルを変えていくという風潮だったと思います。
私も例に漏れず、エコやオーガニックへの関心が高まりました」。

エコへの関心が高まり、建築関係の雑誌から、
断熱材を使ってエネルギーの消費量を少なくしたり、
太陽光発電などの自然エネルギーを活用するエコリフォームの会社に転職したそうです。

きっかけは、一人暮らしをしているお父様のために、ご実家の札幌に帰ることになったことでした。

「一人暮らしをしている父が心配なこともあって、契約更新のタイミングで辞めて、
札幌の実家に帰ることにしました。
とはいえ、収入は必要。仕事を探すために出向いた札幌のハローワークで、
偶然、職業訓練校の建築技術のコースの募集を知りました。
ハローワークの職員に“明日試験ですが、どうしますか?”と聞かれ、迷いなく受けることにしました。
無事に試験にパスし、1年間、転職活動をしながら建築技術を学びました。
おかげで、翌年東京でエコリフォームの会社に就職が決まりました」。

お話を伺って思うのは、その迷いのなさ。

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「“センスがいい人”になりたいんです。
“持ち物や着ている服がかっこいい”という意味合いでのセンスの良さではなく、
自分にとって必要なものをキャッチできるセンスを磨きたいんです。
自分に取って最善なものを選び取ることができるのは、
もしかすると病気の経験があったからかもしれません」。

なんと、大内さんは若い頃に大病の経験があり、その時の経験が自分の人生の指針になっているそうです。

このお話は、次回に続きます。


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