第4回 人生は、舞台の上でたった一人で踊っているダンス

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福岡県糸島で、野草ハーバリストとして活躍する加藤美帆さんにお話を伺っています。

Vol1 . 回り道してたどり着いたのは、素のままの自分に還ること
Vol2.  自分がやりたいことは、自分で決めていい
Vol3, 自然の一部として生きれば、自分に素直になれる

 

糸島に移住し、なんとなくやりたいことが見え始めてきたときに離婚。
ひとりになって、自分で稼ぎ、自分で食べていかなくてはいけなくなりました。
就職しようとも考えたそうですが、なぜかしんどくて体が動かない…….

「どうしよう、とぐるぐる考えているうちに、はっとしたんです。
『そういえば、今私に残されているのは、よもぎかもしれない!』って。
私は植物に触れ、それを暮らしに役立てるために、動物を勉強してきたのかな?と思うようになりました。
獣医学を学び、人間のことを学び、今、植物や自然のことを学んで、さらには食品衛生のことも学んで……。
なんだか、面白いことできそう!って思えたんです」

 

人生の節目に、こんなふうに、今までやってきたことすべてが統合される瞬間があります。
美帆さんは、獣医の勉強をしてきたのに、たどりついたのは植物だった……。
それは、真逆な世界に思えるけれど、ちゃんとつながっている。
私も、15年前に「暮らしのおへそ」を立ち上げたことと、
このウェブサイトを始めたこと、
ライター塾を始めるようになったこと、
そして自分の本を書くようになったこと、はすべてつながっているなあと思います。
そこにあるのは、暮らしの中の小さな発見が、明日を変える力になるということ……。
自分がやってきたことが、1本の線でつながってきたとき、
もうひとつ高くジャンプできるでしょうか?
美帆さんのように、私も「これまで」を整理して「次」を見つけたくなりました。

植物の何にそんなに惹かれたのでしょう?

「どんどん姿が変わっていって、見ていて飽きないところかな。
どんな植物もなんらかの成分を持っているので、薬にしようと思えばできるんです。
その奥深さ……。
あとは、身近にあるということ。
すぐそこに、何百種類もの植物があって、それを食べることができ、
自分の健康を守るために活用できて、お茶にして楽しむことができる。
美容に役立てることだってできます。
その活用の広さにも、面白い!って思えたんです」

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もともと暮らしまわりのことが好きだったそうです。
日々のご飯を作る、掃除をする、片付ける、部屋を整えて生活する……。
そのすべてが好きだった。

「そこに植物があると、なんでもできるんですよね。
幅が広がって、豊かにもなる。
今までやってきたことのすべての交差点であり、すべてを無限大に広げてくれるのが
植物という存在だったのかもしれません」。

でも、お茶を作るだけで食べていくということに迷いはなかったのでしょうか?

「もちろんありましたよ。
最初の頃は、これだけで生活をするのは無理だろうと思って
IT関係の会社に就職しようとしたんです。
そうしたらそこの社長さんがとてもおもしろ方で、
社長がプライベートで借りていた店舗で
『好きなことをやってみたら? 薬草バーなんていいんじゃない?』と言ってくださったんです。
結局就職はせずに、3か月だけ薬草カフェバーをやらせていただきました。
もうこれは、神様が『こっちの道で頑張れ』って言っているんだなって思いました(笑)」

 

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こうして、美帆さんが作り上げたお茶のブランドが「suu」です。
「すっと染み込む、澄み渡る。素の自分に還るお茶」がコンセプト。

「お茶って、香水と同じように、トップノート、ミドルノート、ラストノートがあると思っています。
いわゆる西洋ハーブはトップノートの香りや、最後の色気のある余韻が得意。
一方日本の野草茶は、お味噌汁のような出汁とかコクなど、ボディーがしっかりしているものが多いです。
そんな二つの良さをブレンドしたいなと思って」

今は契約した山から届いた薬草を、選別、焙煎、ブレンド、パッキングと全てを丁寧な手仕事で行い、お茶作りを続けています。
こうして出来上がったのは、「香りひろがる 月のよもぎ茶」「すみわたる 星のよもぎ茶」「ほろりほどける よもぎチャイ」の3種類。
そのほか、「新月のよもぎ茶」「満月のよもぎ茶」なども。

 

お茶は今、口コミでどんどん広がっています。

「生まれて初めて、自分の生き方と、やりたいことと、
得意なことがス〜ッと通ったので、自分が整った状態で仕事ができているんです。
そうすると、不思議と私に同調してくださる方が出てくる。
繋がるべき人とは繋がるし、それがまた次のつながりを呼んで
どんどん続いていきました」

美帆さんは今の仕事を「壮大な実験だと思っているんです」
と語ります。
自分が本当にやりたいと思うことを、愛を持って目一杯真摯にやって
どんな人生になるのかな? という実験……。

そう語る美帆さんの姿のすがすがしいこと。
自分の生き方と、やりたいこと、得意なことがす〜っと通る。
それって、どんなに気持ちがいいことでしょう!
それは、美帆さんが、見栄や評価を手放したからやってきたご褒美にも思えます。

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今回、美帆さんと一緒に糸島を歩きました。
「ほら、あそこにアケビが」「これはキクラゲですよ」
私には雑草にしか見えないのに、美帆さんの目でみると、宝物がいっぱい!

「ここは私にとって、美しさと、美味しさと、楽しさと、神秘の宝庫なんです。
だから、 『suu』の世界観は、私目線で見た自然から、キラキラ美しく見える物を切り取って、
言葉や写真やお茶や他の商品と一緒に出しているっていう感じですね。

何より大事なのは、自分が整っていること。
整っているというのは、自分の本音で生きている時だと思います。

私は人生って、舞台の上でたった一人で踊っているダンスだと思っているんです。
音が聞こえないガラスの向こうに観客がいて、それが他人という存在。
その人たちが笑っていくれていると思うのか、
それとも笑われていると思うのか、喜んで笑顔でいてくれていると思うのか、
どう思うかは全部自分次第だと思います。

だから、とらわれている状態って、観客の顔色ばかり気にして
自分らしく踊れていない、生きられていない、ということ。
でも、整っている時というのは、すごく自分にフォーカスできているんです。
今、私は人生という名の舞台でどう踊りたいのか、
それがやっと自分でわかるようになったかな」

 

美帆さんのお話を聞きながら、私はどんな風に踊っているだろう?と考えました。
私はまだまだ観客の顔色を伺っているかも……。
私は私でどんな踊りを踊りたいのか……。
美帆さんのよもぎ茶に力をもらって、じっくり考えてみたくなりました。

次回は、美帆さんが行っている「薬草リトリート」について伺います。

撮影/亀山ののこ


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