一人勝ちしたって、なんにもいいことはない。

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もっと早く言ってよ!」は、ずっと前から知っている、と思っていたことなのに、この年齢になって「あ、そうか!」とやっとわかった気がする体験を、50代の私が、20代だった私に伝えるつもりで綴っています。

 

あの人はあれが上手で、この人はこれが得意。だったら、わたしはこっちの抜け道を行って、あの人より、この人より先にゴールにたどり着こう!ノリコさんは、そう思っていませんか?シアワセになるためには、誰にも気づかれないように、こっそり進んで、自分が宝箱を最初に開けよう!そう思っているでしょう?
私も、若い頃ずっとそう考えていました。仕事をするときには、あのライターさんよりいい仕事がしたい、たくさんページをもらいたいと思っていたし、いい店がオープンしたと聞けば、誰よりも先にそれを知っておきたかった。

でも……。
50歳を過ぎた今、ようやくこう思えるようになったよ。

一人勝ちしても、いいことなんてなんにもない。

たとえば、素敵な人と知り合ったり、素敵な場所を訪れたり。以前だったら、それを私が一番に雑誌で紹介したい!という思いが強過ぎて誰かに「いいところしらない?」と聞かれても、あえて黙っていたりしたのでした。
なんてイジワル! なんて心が狭かったことでしょう。

でも、今なら「いいこと」「いいもの」を手にしたら、それを必要とする人に、どんどん手渡したいと思います。なぜなら、私がそうやって周りの人に「いいこと」「いいもの」をたくさんいただいたから。

「いいこと」「いいもの」を誰かに手渡しても、それは減ったり、なくなったりしないんだよ。それを、私はつい最近知りました。

それどころか手渡したものは、形を変えて倍以上になってまた私の手元に戻ってくる……。そう実感しています。私が一番必要とするときに、誰かがきっと「いいこと」「いいもの」を手渡してくれるはず。

フラワースタイリストの平井かずみさんは、自分の周りで起こったことを惜しげなく周りの人におすそ分けしてくれます。「一田さん、この人と会った方が絶対いいと思います」と人と人をつないでくれます。だからこそ、私は平井さんに「どこかいいところ知りませんか?」と言われたら全力で自分の引き出しをひっくり返し、「いいこと」「いいもの」を探します。

自分ひとりで出会える人の数なんて知れています。でも、2人、3人、4人と、ボールをパスできる相手が増え、会った人、情報、ものを交換しあえば、どんどんその輪は広がっていく。つまり、ひとりでシアワセになるより、みんなでシアワセになった方が、ずっとその喜びは大きいってこと。

一人勝ちしたって、何にもいいことはない。この法則を知って、人生の後半は欲張らず、隣の人と必要なものを「それはさ……」と交換しあえる暮らしを送りたいなと思います。


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